ある日の日記

発狂

ある年、彼は発狂していた。正確に言うと、毎日24時間、毎月29日彼は発狂していた。そう、29日というのがミソで、月に1日だけ彼は正気に戻るのである。実に奇妙な現象だが、そうなるとある疑問が湧く。我々から見たら、いつ精神病院送りになってもおかしくない彼の普段の言動が発狂しているように見えるが、実態としては月に1度正気に戻る現象の方が『発狂』なのではないか。

デジタル大辞泉[1]によると、発狂とは「[名](スル)精神に異常をきたすこと。」とある。やはり、我々から見て精神に異常をきたしている状況が標準だと考えた場合、その正気に見える日が発狂なのだろう。私はそう確信した。

その次の年、正気に戻っている日はなくなり彼は1年中発狂しはじめた。その様子は異様に見えて、以前より安定した精神状態と行動を見て取れる。やはり、彼にとっては月に1度の正気こそがストレスであり、それが消滅したことには大きな意味があったのだ。

この文章を読んでいる全ての方も、ぜひ発狂を習慣づけて、精神状態の向上を目指すべきであると考える。

 

参考文献

[1]デジタル大辞泉「発狂」小学館. https://kotobank.jp/word/発狂-602344 2024416日閲覧.